田中秀雄『朝鮮で聖者と呼ばれた日本人』重松髜修物語

2010年4月22日木曜日

朝鮮農村物語 我が足跡 鵲(かささぎ)の友情 4

 崔さんを訪ねていくと、今日は日曜日で天道教の教会へ行って不在であると、崔さんよりも年上の細君が答えた。仕方がないからまた山越えをしてあちこち歩いたが、更に一羽の雉も見つからなかった。二人はもうヘトヘトに疲れてしまった。進さんは、
「今日は貴方と一緒に来たから、一羽も見当たらないのだ。」と言って私に責任を転嫁した。

「崔さんは、今年は沢山雉がいると言ったのにどうしたのでしょう。一羽もいないですねえ。」と言って私は岩に腰を下ろし、ゲートルにくっついている草の実を払った。すると直ぐ向かいの墓山の疎林に、鵲(かささぎ)が三羽止まっていたが、こちらを向いてギヤァギヤァとばかげた声を出して鳴き出した。それを見た瞬間「あの鵲でも撃ってやろう」という衝動が咄嗟に私の胸に浮かんだので、進さんの銃を借りてズドンと一発撃った。すると三羽の中の一羽が土饅頭の墓の上に舞い落ちた。そしてギヤァギヤァといやな声を出して、羽ばたきをしながら断末魔の苦しみに悶えていた。

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