辞して南方の小高い丘に上って、その当時葬られた暴徒の墓に詣でた。芝草に覆われた土饅頭の墓には、所々に名もない小さい白い花が無心に咲いていた。私は静かに跼(せぐくま)んで暫し黙祷を捧げた。
踵を返(めぐら)すと私が嘗て撃たれた元の憲兵隊の正門の扉は赤い夕日に照りだされていた。
私は芝草を踏んで丘を下りた。裏山の保護林では閑古鳥が淋しく鳴いていた。
私は重松髜修の孫娘のひとりです。昭和16年に発刊された重松髜修著「朝鮮農村物語」が様々な方の手により、また陽の目を浴びようとしています。皆様に感謝しつつ、祖父の記した朝鮮農村物語を少しずつではありますが更新していきたいと思います。是非ご覧ください。
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