Oさんは私の枕元に散らばっていた手紙や葉書を整理していてくれたが、内地から送って来た新聞の帯封に挟まっていて、見残された一通の白い封筒の手紙を引き抜いて裏返して見ていたが、
「おやッ! 自殺した田井さんから手紙が来ていますよ。」と頓狂な声を出した。
「えーッ?」と私はOさんが差し出した手紙を見ると、裏面に万年筆で「台湾にて 田井囚水」と書いてあった。
「おゝ、これは紛う方なき田井さんの筆跡だ。」
「やはり生きていたのですね。」と進さんは不思議そうに手紙を覗き込んだ。
「私が言ったのが適中した。」と、その当時生存説をとなえていたOさんは、適中した自分の予想に今更の如く驚いていた。私はもう頭がガンガンになったので、進さんにその手紙を渡すと、進さんは吸いかけていた煙草を火鉢の灰に差し込んで、封を切って読み始めた。
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